21: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/26(火)14:33:41 ID:A44QKpe2U
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22: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/26(火)14:34:07 ID:A44QKpe2U
――お兄ちゃんへ。
お兄ちゃん、今日まで本当にありがとう。
考えてみれば、私はお兄ちゃんに甘えてばっかりでした。いつもお兄ちゃんにくっ付いて、泣いて、笑って、怒って、落ち込んで……それでもお兄ちゃんは、ずっと私を見てくれて……。
授業参観も、学芸会も、合唱コンクールも、卒業式も、入学式も……いつも、私を見てくれていました。
……本当に嬉しかった。
いつも泣きそうな時、傍にはお兄ちゃんがいてくれて、涙を拭ってくれました。そして言うんです。
“行こうか、ひまわり”――
座り込む私の手を掴んで、立ち止まる私を引っ張ってくれるんです。その手はとても暖かくて、とても安心できて……
ケンカした時も、次の日にはご飯を作ってくれてるんです。
不器用に、不愛想に笑いながら、美味しいか言ってくれるんです。
お兄ちゃん……あなたの妹で、本当に良かった。本当に幸せだった。
……今の私があるのは、お兄ちゃんのおかげです。
ずっと、大好きです。ありがとう、お兄ちゃん――――
――手紙の最後は、声に涙が混じり、うまく話せていなかった。
それでも、会場中が暖かい拍手に包まれていた。
オラは下を向き、ただ拍手を受ける。本当はひまわりに言いたかった。
お礼を言いたいのは、オラの方です――と。
でも前を向けなかった。兄としての意地なのかもしれない。
流す涙を、彼女には見せたくなかった。最後まで、笑顔を向けていたかった。
それでも、少しだけ視線を彼女に向ける。
――ひまわりは、微笑んでいた。
優しい雫が伝う顔で、ただ優しく、オラの方を見ていた。
彼女は、やっぱり太陽だった。優しく照らしてくれる太陽だった。
何度もオラのを救ってくれた、勇気付けてくれた、光あふれる、向日葵だった……
その姿を見ていると、益々彼女の姿を見ることが出来なくなってしまった。
……その後パーティーは、恙なく幕を下ろす。
そしてそれから2週間後、ひまわりは、風間くんと旅立っていった……。
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「……え?お、お兄ちゃん……?」
「聞こえなかったのか?――この家を、出るんだ」
「……!」
ひまわりは顔を青くし、激しく動揺しているようだった。
それも当たり前だろう。
ひまわりとはケンカをすることはあっても、ここまでの言葉を口にしたことはない。
にも関わらず、ケンカらしいケンカもしていない今、唐突にそう言われて混乱しているのだろう。
なぜ、オラがそんなことを言ったのか分からない。
なぜ、そう言われたのか分からない。
なぜ、なぜ、なぜ、なぜ……きっと彼女の頭のなかは、そればかりが漂っているだろう。
気が付けば、彼女は涙を流していた。
「……ひまわり……今日、風間くんと会ったよ」
「……!」
「プロポーズ、断ったそうじゃないか……なぜだ?」
「……だ、だって……それは……」
「風間くんが、嫌になったのか?」
「そ、そんなんじゃないよ!……そんなんじゃ、ないけど……」
(……即答、か……)
これで、確信した。
それと同時に、言い知れぬ怒りのような思いが沸々と生まれていた。
「聞こえなかったのか?――この家を、出るんだ」
「……!」
ひまわりは顔を青くし、激しく動揺しているようだった。
それも当たり前だろう。
ひまわりとはケンカをすることはあっても、ここまでの言葉を口にしたことはない。
にも関わらず、ケンカらしいケンカもしていない今、唐突にそう言われて混乱しているのだろう。
なぜ、オラがそんなことを言ったのか分からない。
なぜ、そう言われたのか分からない。
なぜ、なぜ、なぜ、なぜ……きっと彼女の頭のなかは、そればかりが漂っているだろう。
気が付けば、彼女は涙を流していた。
「……ひまわり……今日、風間くんと会ったよ」
「……!」
「プロポーズ、断ったそうじゃないか……なぜだ?」
「……だ、だって……それは……」
「風間くんが、嫌になったのか?」
「そ、そんなんじゃないよ!……そんなんじゃ、ないけど……」
(……即答、か……)
これで、確信した。
それと同時に、言い知れぬ怒りのような思いが沸々と生まれていた。
22: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/26(火)14:34:07 ID:A44QKpe2U
「……悪いな。全部教えてもらったよ。風間くん、なかなか言わなかったけどな。
――ひまわり、オラを気遣って断ったんだろ?」
「――ッ!そ、それは……」
「――ふざけんなよッ!!!」
「――ッ!」
ひまわりは、体を震わせた。
「それでオラを気遣ったつもりか!?オラのためになると思ったのか!?
――オラを理由に使っただけじゃないか!!」
「ち、違う!」
ひまわりは、慌てて声を出す。
「――だって!私が風間くんと一緒に行ったら、お兄ちゃんが一人になるじゃない!
いつも私の横にいてくれて、励ましてくれていたお兄ちゃんがだよ!?
――そんなの……出来るわけないじゃない!」
「それがどうしたんだよ!勝手に同情してんじゃねえよ!!」
「同情なんかじゃない!たった一人の家族だよ!?
お父さんとお母さんが死んだときも!私が歩けなくなった時も!そして今も!
なんでお兄ちゃんばっかり、全部背負うの!?なんでお兄ちゃんだけが、我慢するの!?
――お兄ちゃんばっかり辛い思いをして……そんなの、絶対嫌ッッ!!」
「……」
「……」
……沈黙が、流れる。
外からの雨の音は、止むことはない。
ザーザー……ザーザー……涙を流すように、降り続いていた。
――ひまわり、オラを気遣って断ったんだろ?」
「――ッ!そ、それは……」
「――ふざけんなよッ!!!」
「――ッ!」
ひまわりは、体を震わせた。
「それでオラを気遣ったつもりか!?オラのためになると思ったのか!?
――オラを理由に使っただけじゃないか!!」
「ち、違う!」
ひまわりは、慌てて声を出す。
「――だって!私が風間くんと一緒に行ったら、お兄ちゃんが一人になるじゃない!
いつも私の横にいてくれて、励ましてくれていたお兄ちゃんがだよ!?
――そんなの……出来るわけないじゃない!」
「それがどうしたんだよ!勝手に同情してんじゃねえよ!!」
「同情なんかじゃない!たった一人の家族だよ!?
お父さんとお母さんが死んだときも!私が歩けなくなった時も!そして今も!
なんでお兄ちゃんばっかり、全部背負うの!?なんでお兄ちゃんだけが、我慢するの!?
――お兄ちゃんばっかり辛い思いをして……そんなの、絶対嫌ッッ!!」
「……」
「……」
……沈黙が、流れる。
外からの雨の音は、止むことはない。
ザーザー……ザーザー……涙を流すように、降り続いていた。
23: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/26(火)14:56:03 ID:A44QKpe2U
「……ひまわり……」
「……」
ひまわりは、ただ泣いていた。
オラの言葉が届いていないのか、それとも答えられないのか……それは分からない。
それでもオラは、彼女に話しかけた。
「……ひまわり、お前は勘違いをしているよ……。
オラはな、ただ、お前が笑っていられるようにしていただけなんだよ。
ひまわりの笑顔は、本物の太陽みたいなんだよ。
暖かくて、安心できて、いつも、オラを照らしてくれてる。
オラは、それに救われてたんだよ」
「……」
「……それなのに、ひまわりはオラのために辛い思いをしている。
それじゃ、ダメなんだよ。ひまわりが幸せじゃないと、オラも幸せになれないんだよ」
「……お兄ちゃん……」
「本当にオラのことを思ってくれるなら、幸せになれ。
たとえオラと離れることになっても、自分の幸せを掴むんだ。
それが、オラの願いだ。……いや、オラだけじゃない。それはきっと、父ちゃん、母ちゃんの願いでもある。
――ひまわりの家族全員の……お前を大切に思う人みんなの、願いなんだよ」
「……ひぐっ……ひぐっ……」
「――風間くんのところにいけ。
お前は、本当はそうしたいんだろ?……だったら、後ろを振り返るな。お前は、前だけを見るんだ。お前の幸せは、今目の前にある。それを、掴むんだ。
……オラは、後ろからそれを見てるからさ。どれだけ離れてても、ひまわりの幸せを見てるからさ。
そしたらきっと、オラも幸せになれる。
……だから、ひまわり。――この家を、出るんだ……」
「……あああ……あああ……うぁあああ……!」
ひまわりは、声を上げて泣いた。
それは、自分の中にある罪悪感を消し去るためだろうか。
彼女の中で、今オラは、足枷になっている。
それを外したことにより、彼女の中の何かが弾けたのかもしれない。
だけど、その涙の先には、必ず彼女の笑顔があると信じている。
だからオラは、ただ彼女を見ていた。泣き続ける彼女を見ていた。
――ふと、頬に何かがついているのに気付く。
触ってみれば、それはべたべたしていた。
(……なんだよ……なんでオラも泣いてんだよ……)
……それでも、手で触れたものは、とても暖かかった。
「……」
ひまわりは、ただ泣いていた。
オラの言葉が届いていないのか、それとも答えられないのか……それは分からない。
それでもオラは、彼女に話しかけた。
「……ひまわり、お前は勘違いをしているよ……。
オラはな、ただ、お前が笑っていられるようにしていただけなんだよ。
ひまわりの笑顔は、本物の太陽みたいなんだよ。
暖かくて、安心できて、いつも、オラを照らしてくれてる。
オラは、それに救われてたんだよ」
「……」
「……それなのに、ひまわりはオラのために辛い思いをしている。
それじゃ、ダメなんだよ。ひまわりが幸せじゃないと、オラも幸せになれないんだよ」
「……お兄ちゃん……」
「本当にオラのことを思ってくれるなら、幸せになれ。
たとえオラと離れることになっても、自分の幸せを掴むんだ。
それが、オラの願いだ。……いや、オラだけじゃない。それはきっと、父ちゃん、母ちゃんの願いでもある。
――ひまわりの家族全員の……お前を大切に思う人みんなの、願いなんだよ」
「……ひぐっ……ひぐっ……」
「――風間くんのところにいけ。
お前は、本当はそうしたいんだろ?……だったら、後ろを振り返るな。お前は、前だけを見るんだ。お前の幸せは、今目の前にある。それを、掴むんだ。
……オラは、後ろからそれを見てるからさ。どれだけ離れてても、ひまわりの幸せを見てるからさ。
そしたらきっと、オラも幸せになれる。
……だから、ひまわり。――この家を、出るんだ……」
「……あああ……あああ……うぁあああ……!」
ひまわりは、声を上げて泣いた。
それは、自分の中にある罪悪感を消し去るためだろうか。
彼女の中で、今オラは、足枷になっている。
それを外したことにより、彼女の中の何かが弾けたのかもしれない。
だけど、その涙の先には、必ず彼女の笑顔があると信じている。
だからオラは、ただ彼女を見ていた。泣き続ける彼女を見ていた。
――ふと、頬に何かがついているのに気付く。
触ってみれば、それはべたべたしていた。
(……なんだよ……なんでオラも泣いてんだよ……)
……それでも、手で触れたものは、とても暖かかった。
24: 名無しさん@おーぷん 2014/08/26(火)14:59:00 ID:LNm00ISRk
泣いた
42: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/26(火)20:00:00 ID:pxF9qSl6o
「……まったく……ここのところ、よく僕を呼び出すよな……」
コーヒーを飲みながら、風間くんはぼやいていた。
ここはとある喫茶店。そこに、オラは風間くんを呼んでいた。
そんなことを言いながらも、結局は来てくれるのは、本当に風間くんらしいと思う。
「ごめんごめん。ちょっと、話があったからね」
すると風間くんは、コーヒーカップをゆっくりと置き、改めて聞いてきた。
「……それで?なんの用?」
「ああ。……風間くんさ、ひまわりのこと、どう思ってる?」
「……え?」
「率直に、今の気持ちを聞きたいんだよ」
「……どうって……」
「……」
「……」
一度苦笑いを浮かべた風間くんだったが、彼はすぐにオラの目を見た。
そして、顔を引き締めて、改めて口を開く。
「――当然、好きさ。出来るなら、彼女と添い遂げたい――」
「……」
「……」
……彼の目に、嘘はなかった。
彼の視線は、どこかに逸れることもなく、ただ真っ直ぐオラに向けられていた。
コーヒーを飲みながら、風間くんはぼやいていた。
ここはとある喫茶店。そこに、オラは風間くんを呼んでいた。
そんなことを言いながらも、結局は来てくれるのは、本当に風間くんらしいと思う。
「ごめんごめん。ちょっと、話があったからね」
すると風間くんは、コーヒーカップをゆっくりと置き、改めて聞いてきた。
「……それで?なんの用?」
「ああ。……風間くんさ、ひまわりのこと、どう思ってる?」
「……え?」
「率直に、今の気持ちを聞きたいんだよ」
「……どうって……」
「……」
「……」
一度苦笑いを浮かべた風間くんだったが、彼はすぐにオラの目を見た。
そして、顔を引き締めて、改めて口を開く。
「――当然、好きさ。出来るなら、彼女と添い遂げたい――」
「……」
「……」
……彼の目に、嘘はなかった。
彼の視線は、どこかに逸れることもなく、ただ真っ直ぐオラに向けられていた。
45: 名無しさん@おーぷん 2014/08/26(火)20:26:35 ID:5b4OTNbfq
よっしゃあああ
79: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)12:27:44 ID:o1174ioJr
「……よかった……」
「……?」
オラの呟きに、風間くんは首を傾げる。
「……風間くん、ちょっと来てよ」
「え?」
「いいからさ。付いて来て」
「……また、僕を連れ回す気か?」
「そんなんじゃないって。……ただ、あの日に戻るだけだよ」
「……どういうことだよ」
「いいからいいから」
「……」
少し、強引に風間くんを連れ出した。
彼は最後まで首を捻っていたが、今はそれでいい。
……とにかく、来てさえくれれば、それでいいんだ。
「……?」
オラの呟きに、風間くんは首を傾げる。
「……風間くん、ちょっと来てよ」
「え?」
「いいからさ。付いて来て」
「……また、僕を連れ回す気か?」
「そんなんじゃないって。……ただ、あの日に戻るだけだよ」
「……どういうことだよ」
「いいからいいから」
「……」
少し、強引に風間くんを連れ出した。
彼は最後まで首を捻っていたが、今はそれでいい。
……とにかく、来てさえくれれば、それでいいんだ。
80: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)12:27:53 ID:o1174ioJr
「――しんのすけ……ここって……」
オラが案内した場所で、風間くんは周囲をキョロキョロ見渡していた。
そこは、風間くんとひまわりが決別した場所。そして、オラが風間くんから全てを聞いた場所。
ひまわりの涙が生まれた場所。オラの葛藤が生まれた場所。
終わりであり、始まりでもある場所……
――あの、公園だ。
前の日と違い、空は晴れ渡っていた。日射しが木々に降り注ぎ、そして木々は、必死に太陽に向かって葉を伸ばす。
少しでも光を掴むかのように。少しでも、温もりに近づくかのように。
……そう、太陽に、触れようとしているんだ。
「……風間くん、ほら……」
「……あれは……」
オラが指し示す方向に、風間くんは目を凝らす。
そしてそこにいた人物を見た時、彼は目を大きくして、名前を口にした。
「……ひまわり、ちゃん……?」
「……風間くん……」
「………」
公園の真ん中で、ひまわりと風間くんはお互いを見つめたまま、動かなかった。
何も言わず、ただ向かい合う二人。
――その姿はまるで、太陽と木々のようだった。
オラが案内した場所で、風間くんは周囲をキョロキョロ見渡していた。
そこは、風間くんとひまわりが決別した場所。そして、オラが風間くんから全てを聞いた場所。
ひまわりの涙が生まれた場所。オラの葛藤が生まれた場所。
終わりであり、始まりでもある場所……
――あの、公園だ。
前の日と違い、空は晴れ渡っていた。日射しが木々に降り注ぎ、そして木々は、必死に太陽に向かって葉を伸ばす。
少しでも光を掴むかのように。少しでも、温もりに近づくかのように。
……そう、太陽に、触れようとしているんだ。
「……風間くん、ほら……」
「……あれは……」
オラが指し示す方向に、風間くんは目を凝らす。
そしてそこにいた人物を見た時、彼は目を大きくして、名前を口にした。
「……ひまわり、ちゃん……?」
「……風間くん……」
「………」
公園の真ん中で、ひまわりと風間くんはお互いを見つめたまま、動かなかった。
何も言わず、ただ向かい合う二人。
――その姿はまるで、太陽と木々のようだった。
82: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)13:28:22 ID:o1174ioJr
「………」
「………」
気まずいのだろうか。二人とも、全然動こうとしていない。
しばらく時間が経ったところで、ようやく風間くんが少しだけ顔をオラに向ける。
これはどういうことなんだ―――そう言わんばかりに、チラチラとオラの様子を窺う。
風間くんも、かなり混乱しているようだった。
「……やり直しだよ、風間くん」
彼に、助け舟を出す。
「……え?」
「あの日のやり直し。もう一度、ここから始めるんだ」
「……で、でも……」
「ひまわりにもあるんだよ。本当に言いたかった言葉が。キミにもあるはずだ。本当は聞きたかった言葉が。
この前は、ちょっと決断が早かっただけなんだ。きっとキミらは、同じ未来を見てるはずなんだ」
「……しんのすけ……」
「オラに出来るのは、ここまでだ。風間くん、キミさえ良ければ、もう一度伝えてほしい」
「……」
風間くんは何も言わない。だけど、その表情は、確かに何かを伝えていた。
そして彼の目は、不思議とオラを安心させた。
「………」
気まずいのだろうか。二人とも、全然動こうとしていない。
しばらく時間が経ったところで、ようやく風間くんが少しだけ顔をオラに向ける。
これはどういうことなんだ―――そう言わんばかりに、チラチラとオラの様子を窺う。
風間くんも、かなり混乱しているようだった。
「……やり直しだよ、風間くん」
彼に、助け舟を出す。
「……え?」
「あの日のやり直し。もう一度、ここから始めるんだ」
「……で、でも……」
「ひまわりにもあるんだよ。本当に言いたかった言葉が。キミにもあるはずだ。本当は聞きたかった言葉が。
この前は、ちょっと決断が早かっただけなんだ。きっとキミらは、同じ未来を見てるはずなんだ」
「……しんのすけ……」
「オラに出来るのは、ここまでだ。風間くん、キミさえ良ければ、もう一度伝えてほしい」
「……」
風間くんは何も言わない。だけど、その表情は、確かに何かを伝えていた。
そして彼の目は、不思議とオラを安心させた。
83: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)13:28:28 ID:o1174ioJr
「……ひまわり。本当にオラのことを考えてくれるなら、お前が思うようにしろ。お前の願いを、口にするんだ」
「……お兄ちゃん……」
ひまわりは、潤んだ瞳でオラを見る。もしかしたら、まだ悩んでいるのかもしれない。
……だから、もう少し背中を押すことにした。
「……大丈夫。ひまわりがどういう返事をしても、お兄ちゃんはもう怒らないよ。
お兄ちゃんは、ずっとひまわりの味方だ」
「……うん……」
そしてオラは、その場を立ち去る。
オラが歩き出すと、二人はまたお互いを見つめ合っていた。
それからどういう話になったのか分からない。二人が、どういう言葉を送ったのか分からない。
……だけど、それはオラが干渉するべきではないことだろう。それに、きっと二人なら、オラなんか必要じゃない。必要ないんだ。
少し寂しくはあるけど、それでも暖かい。
どこかすっきりした気持ちを胸に、オラは家に帰った。
……それから1週間後、風間くんはオラの家に来た。
そして、彼はひまわりと一緒に、オラに結婚することを告げた。
「……お兄ちゃん……」
ひまわりは、潤んだ瞳でオラを見る。もしかしたら、まだ悩んでいるのかもしれない。
……だから、もう少し背中を押すことにした。
「……大丈夫。ひまわりがどういう返事をしても、お兄ちゃんはもう怒らないよ。
お兄ちゃんは、ずっとひまわりの味方だ」
「……うん……」
そしてオラは、その場を立ち去る。
オラが歩き出すと、二人はまたお互いを見つめ合っていた。
それからどういう話になったのか分からない。二人が、どういう言葉を送ったのか分からない。
……だけど、それはオラが干渉するべきではないことだろう。それに、きっと二人なら、オラなんか必要じゃない。必要ないんだ。
少し寂しくはあるけど、それでも暖かい。
どこかすっきりした気持ちを胸に、オラは家に帰った。
……それから1週間後、風間くんはオラの家に来た。
そして、彼はひまわりと一緒に、オラに結婚することを告げた。
84: 名無しさん@おーぷん 2014/08/27(水)13:29:57 ID:a6uCoWeWd
ひまわり、風間くんおめ!
110: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)19:01:17 ID:o1174ioJr
「……そうですか……風間くんとひまわりちゃんが……」
会社の椅子にもたれかかっていたあいちゃんは、オラの言葉を呟く。
表情は、どこか安堵していた。
「式は、近親者だけでするって。あいちゃんにも招待状が届くはずだよ。かなり急な日取りだけど……風間くん、時間ないし……」
「……そうでしたね。風間くんは……」
ふと、あいちゃんは表情を伏せる。
祝福したいが、素直には出来ない……そう言った顔をしていた。
……風間くんは、間もなく海外へ出発する。
海外の支社では、しばらく忙しいだろう。新しく出来る支社なら、それも仕方ない。
おそらくは、数年……下手すれば、それ以上は帰らないだろう。
「……しんのすけさん。ひまわりちゃんが風間くんに付いて行くということは……」
「――あいちゃん。今は、二人を祝福しよう。そして、笑顔で見送るんだよ」
「……はい」
あいちゃんは、沈んだ表情のまま小さく頷く。
……ひまわりの結婚式は、間もなくだ。
会社の椅子にもたれかかっていたあいちゃんは、オラの言葉を呟く。
表情は、どこか安堵していた。
「式は、近親者だけでするって。あいちゃんにも招待状が届くはずだよ。かなり急な日取りだけど……風間くん、時間ないし……」
「……そうでしたね。風間くんは……」
ふと、あいちゃんは表情を伏せる。
祝福したいが、素直には出来ない……そう言った顔をしていた。
……風間くんは、間もなく海外へ出発する。
海外の支社では、しばらく忙しいだろう。新しく出来る支社なら、それも仕方ない。
おそらくは、数年……下手すれば、それ以上は帰らないだろう。
「……しんのすけさん。ひまわりちゃんが風間くんに付いて行くということは……」
「――あいちゃん。今は、二人を祝福しよう。そして、笑顔で見送るんだよ」
「……はい」
あいちゃんは、沈んだ表情のまま小さく頷く。
……ひまわりの結婚式は、間もなくだ。
114: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)20:14:33 ID:o1174ioJr
~式当日~
「――しんちゃーん!」
外にいたオラへ、まさおくん、ねねちゃん、ぼーちゃんが声をかける。
振り返れば、そこには、スーツやドレスを着こなした、笑顔の三人が。
……笑顔、ということは、まさおくんは、まだねねちゃんの本当の気持ちを知らないようだ……
「ん?どうしたのしんちゃん?なんか顔に付いてる?」
まさおくんは、不思議そうな顔をしていた。
「……いや、なんでもないよ。それより、今日は来てくれてありがとう。ひまわりに代わって、お礼を言うよ」
「何言ってんのよ。風間くんとひまわりちゃんの結婚式じゃない。たとえ嵐が来ても来るわよ」
「うん。僕も、二人を見てみたい」
ねねちゃん、ぼーちゃんは笑顔で返事を返す。
「僕もだよ。……もちろん、次は僕だけどね……」
まさおくんはボソリと呟きながら、頬を染めてねねちゃんを見ていた。
(まさおくん……“知らぬは仏、見ぬが神”とは、よく言ったものだな……)
心の中でまさおくんに合掌をしながら、頭を一度下げた。
会場に来たのは、ねねちゃんだけじゃない。
ななこさん、園長先生、むさえさん……色んな人が、そこにいた。これまでオラ達が出会ってきた人たちが、笑顔でそこにいた。
この式は、かなりの急なスケジュールで開催されている。
それにも関わらず、これほどまで人が集まったことには、感謝してもしきれない。
(ひまわり……風間くん……。みんな、祝福しているよ)
思わず、青空を仰ぎ、準備をしているはずの二人に言葉を向けた。
それに応えるように、空には番いの鳥が、仲睦まじく飛び回っていた。
「――しんちゃーん!」
外にいたオラへ、まさおくん、ねねちゃん、ぼーちゃんが声をかける。
振り返れば、そこには、スーツやドレスを着こなした、笑顔の三人が。
……笑顔、ということは、まさおくんは、まだねねちゃんの本当の気持ちを知らないようだ……
「ん?どうしたのしんちゃん?なんか顔に付いてる?」
まさおくんは、不思議そうな顔をしていた。
「……いや、なんでもないよ。それより、今日は来てくれてありがとう。ひまわりに代わって、お礼を言うよ」
「何言ってんのよ。風間くんとひまわりちゃんの結婚式じゃない。たとえ嵐が来ても来るわよ」
「うん。僕も、二人を見てみたい」
ねねちゃん、ぼーちゃんは笑顔で返事を返す。
「僕もだよ。……もちろん、次は僕だけどね……」
まさおくんはボソリと呟きながら、頬を染めてねねちゃんを見ていた。
(まさおくん……“知らぬは仏、見ぬが神”とは、よく言ったものだな……)
心の中でまさおくんに合掌をしながら、頭を一度下げた。
会場に来たのは、ねねちゃんだけじゃない。
ななこさん、園長先生、むさえさん……色んな人が、そこにいた。これまでオラ達が出会ってきた人たちが、笑顔でそこにいた。
この式は、かなりの急なスケジュールで開催されている。
それにも関わらず、これほどまで人が集まったことには、感謝してもしきれない。
(ひまわり……風間くん……。みんな、祝福しているよ)
思わず、青空を仰ぎ、準備をしているはずの二人に言葉を向けた。
それに応えるように、空には番いの鳥が、仲睦まじく飛び回っていた。
121: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)21:47:57 ID:o1174ioJr
みんなが笑顔で見送る中、式は始まった。
白いタキシード姿の風間くんと、純白のウェディングドレスを着たひまわり……風間くんは、車いすのひまわりを後ろから押しながらバージンロードを歩く。
風間くんはさることながら、最初にひまわりの姿を見た時には驚いた。
ひまわは、とても綺麗だった。
これまで一番近くで見ていたはずだった。でも、目の前にいるのは、間違いなく一人の女性だった。
純白に包まれた彼女の姿を見ていると、何だか感慨深くなる。
ずっと子供のように見ていたが……いつの間にか、彼女は大人になっていたようだ。
式が終わると、簡単なパーティーへと移る。
ひまわり達の結婚式が主ではあるが、どちらかというと、同窓会のようにも見える。
もちろんパーティーの中心にはひまわり達がいたが、それぞれの近況を報告し合い、酒を交わし、昔話に花を咲かせる……その光景には、温かみがあった。会場全体が、緩やかな時間の中にあった。
それを満足そうに眺めていると、突然、会場が真っ暗になった。
ざわざわとする会場の中、スポットライトがオラとひまわりを照らし出した。
(……なんだ?)
会場中の視線を受ける中、車いすに座ったひまわりは、風間くんが持つマイクに向けて話す。
「……会場のみなさん。今日は、私達の結婚式に出席していただき、本当にありがとうございます。
――皆様には申し訳ありませんが、今日この場にいる、私のお兄ちゃん……兄に、言葉を送りたいと思います。
少しの間、お付き合いください……」
会場中は、水を打ったように、静まり返る。全員が話を中断し、彼女に視線を送っていた。
その中で、ひまわりは手紙を手にし、静かに、囁きかけるように、読み始めた。
白いタキシード姿の風間くんと、純白のウェディングドレスを着たひまわり……風間くんは、車いすのひまわりを後ろから押しながらバージンロードを歩く。
風間くんはさることながら、最初にひまわりの姿を見た時には驚いた。
ひまわは、とても綺麗だった。
これまで一番近くで見ていたはずだった。でも、目の前にいるのは、間違いなく一人の女性だった。
純白に包まれた彼女の姿を見ていると、何だか感慨深くなる。
ずっと子供のように見ていたが……いつの間にか、彼女は大人になっていたようだ。
式が終わると、簡単なパーティーへと移る。
ひまわり達の結婚式が主ではあるが、どちらかというと、同窓会のようにも見える。
もちろんパーティーの中心にはひまわり達がいたが、それぞれの近況を報告し合い、酒を交わし、昔話に花を咲かせる……その光景には、温かみがあった。会場全体が、緩やかな時間の中にあった。
それを満足そうに眺めていると、突然、会場が真っ暗になった。
ざわざわとする会場の中、スポットライトがオラとひまわりを照らし出した。
(……なんだ?)
会場中の視線を受ける中、車いすに座ったひまわりは、風間くんが持つマイクに向けて話す。
「……会場のみなさん。今日は、私達の結婚式に出席していただき、本当にありがとうございます。
――皆様には申し訳ありませんが、今日この場にいる、私のお兄ちゃん……兄に、言葉を送りたいと思います。
少しの間、お付き合いください……」
会場中は、水を打ったように、静まり返る。全員が話を中断し、彼女に視線を送っていた。
その中で、ひまわりは手紙を手にし、静かに、囁きかけるように、読み始めた。
122: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)21:48:38 ID:o1174ioJr
――お兄ちゃんへ。
お兄ちゃん、今日まで本当にありがとう。
考えてみれば、私はお兄ちゃんに甘えてばっかりでした。いつもお兄ちゃんにくっ付いて、泣いて、笑って、怒って、落ち込んで……それでもお兄ちゃんは、ずっと私を見てくれて……。
授業参観も、学芸会も、合唱コンクールも、卒業式も、入学式も……いつも、私を見てくれていました。
……本当に嬉しかった。
いつも泣きそうな時、傍にはお兄ちゃんがいてくれて、涙を拭ってくれました。そして言うんです。
“行こうか、ひまわり”――
座り込む私の手を掴んで、立ち止まる私を引っ張ってくれるんです。その手はとても暖かくて、とても安心できて……
ケンカした時も、次の日にはご飯を作ってくれてるんです。
不器用に、不愛想に笑いながら、美味しいか言ってくれるんです。
お兄ちゃん……あなたの妹で、本当に良かった。本当に幸せだった。
……今の私があるのは、お兄ちゃんのおかげです。
ずっと、大好きです。ありがとう、お兄ちゃん――――
――手紙の最後は、声に涙が混じり、うまく話せていなかった。
それでも、会場中が暖かい拍手に包まれていた。
オラは下を向き、ただ拍手を受ける。本当はひまわりに言いたかった。
お礼を言いたいのは、オラの方です――と。
でも前を向けなかった。兄としての意地なのかもしれない。
流す涙を、彼女には見せたくなかった。最後まで、笑顔を向けていたかった。
それでも、少しだけ視線を彼女に向ける。
――ひまわりは、微笑んでいた。
優しい雫が伝う顔で、ただ優しく、オラの方を見ていた。
彼女は、やっぱり太陽だった。優しく照らしてくれる太陽だった。
何度もオラのを救ってくれた、勇気付けてくれた、光あふれる、向日葵だった……
その姿を見ていると、益々彼女の姿を見ることが出来なくなってしまった。
……その後パーティーは、恙なく幕を下ろす。
そしてそれから2週間後、ひまわりは、風間くんと旅立っていった……。
124: 名無しさん@おーぷん 2014/08/27(水)21:58:37 ID:Q1lyPllg1
あああああ(´;Д;`)ひまああああ
125: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)22:10:04 ID:o1174ioJr
――お兄ちゃんは、いつまでもお兄ちゃんだからね――
――しんのすけ、ひまわりちゃんは、必ず幸せにするよ。……男として、親友として、お前に約束する―――
空港での別れ際、二人はそう言っていた。
正直、何も心配はしていない。
あの二人なら、きっと幸せになれる……その確信が、なぜかオラにはあった。二人をよく知るオラだからこそ、そう思えた。
「……ふう。ちょっと休憩……」
家を片付けていたオラは、大きく体を伸ばす。
ひまわりの荷物は、ほとんど送っていた。彼女に部屋だった場所には、机とベッドしか残っていない。
「……」
少し、家の中を歩いて回る。
色々な思い出が詰まった、慣れ親しんだ家。
オラがいて、ひまわりがいて、父ちゃん、母ちゃん、シロがいた家……
(……こんなに、広かったっけ……)
たった一人の主を持つ家は、とても広く思えた。でもそれ以上に、とても静かだった。
――しんのすけ、ひまわりちゃんは、必ず幸せにするよ。……男として、親友として、お前に約束する―――
空港での別れ際、二人はそう言っていた。
正直、何も心配はしていない。
あの二人なら、きっと幸せになれる……その確信が、なぜかオラにはあった。二人をよく知るオラだからこそ、そう思えた。
「……ふう。ちょっと休憩……」
家を片付けていたオラは、大きく体を伸ばす。
ひまわりの荷物は、ほとんど送っていた。彼女に部屋だった場所には、机とベッドしか残っていない。
「……」
少し、家の中を歩いて回る。
色々な思い出が詰まった、慣れ親しんだ家。
オラがいて、ひまわりがいて、父ちゃん、母ちゃん、シロがいた家……
(……こんなに、広かったっけ……)
たった一人の主を持つ家は、とても広く思えた。でもそれ以上に、とても静かだった。
128: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)22:18:29 ID:o1174ioJr
(……ん?)
……ふと、柱の隅に傷を見つけた。柱の腰の位置ほどに付いた、古びた傷……
そして、昔のことを思い出した。
『――お兄ちゃん!ひま、大きくなったよ!』
『お?どれどれ……なんだ、まだ小さいじゃないか……』
『そんなことないもん!ひま、大きくなってるもん!もうすぐ大人だもん!』
『そうか?なら、記録でも付けておくか……』
『記録?』
『そうそう。……この傷が、今のひまわりの身長。これを見下ろせるくらいになったら、きっとひまわりは、素敵な大人になってるだろうな』
『素敵な大人?』
『ひまわりの名前の通り、色んな人を、元気にさせる人だよ。きっとひまわりなら、みんなを幸せに出来るさ』
『……よく、分かんない……』
『ハハハ、難しかったかな。まあ、大人になったら分かるよ―――』
(……すっかり、忘れていたな……)
その傷は、すっかり見下ろせる位置になっていた。
オラは、大人になったのだろうか。ひまわりはどうだろう……
でも、彼女との想い出を振り返ると、自然と笑顔になれる。だったら彼女は、きっと、あの日話していた通りの大人になれたんだと思う。
――そしてそれは、オラが生涯、誇りに思えることだと思う。
(……父ちゃん、母ちゃん。これで、良かったんだよな。オラ、頑張ったよな。最後まで、ひまわりは笑顔だったよ。これなら、褒めてくれるよな……)
天井を見上げ、心の中で父ちゃん達に報告する。
大きく息を吸い込み、息を深く吐く。
胸の中は、どこか穴が空いているような気分だった。それでも、それ以上に暖かい。
「――よし!掃除を始めるかな!」
何かを奮い立たせるように、少し声を強く出す。そして、掃除に戻った。
……ふと、柱の隅に傷を見つけた。柱の腰の位置ほどに付いた、古びた傷……
そして、昔のことを思い出した。
『――お兄ちゃん!ひま、大きくなったよ!』
『お?どれどれ……なんだ、まだ小さいじゃないか……』
『そんなことないもん!ひま、大きくなってるもん!もうすぐ大人だもん!』
『そうか?なら、記録でも付けておくか……』
『記録?』
『そうそう。……この傷が、今のひまわりの身長。これを見下ろせるくらいになったら、きっとひまわりは、素敵な大人になってるだろうな』
『素敵な大人?』
『ひまわりの名前の通り、色んな人を、元気にさせる人だよ。きっとひまわりなら、みんなを幸せに出来るさ』
『……よく、分かんない……』
『ハハハ、難しかったかな。まあ、大人になったら分かるよ―――』
(……すっかり、忘れていたな……)
その傷は、すっかり見下ろせる位置になっていた。
オラは、大人になったのだろうか。ひまわりはどうだろう……
でも、彼女との想い出を振り返ると、自然と笑顔になれる。だったら彼女は、きっと、あの日話していた通りの大人になれたんだと思う。
――そしてそれは、オラが生涯、誇りに思えることだと思う。
(……父ちゃん、母ちゃん。これで、良かったんだよな。オラ、頑張ったよな。最後まで、ひまわりは笑顔だったよ。これなら、褒めてくれるよな……)
天井を見上げ、心の中で父ちゃん達に報告する。
大きく息を吸い込み、息を深く吐く。
胸の中は、どこか穴が空いているような気分だった。それでも、それ以上に暖かい。
「――よし!掃除を始めるかな!」
何かを奮い立たせるように、少し声を強く出す。そして、掃除に戻った。
131: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)22:29:28 ID:o1174ioJr
――ピンポーン
「……ん?」
その時、ふと玄関からチャイムが鳴り響いた。
「誰だろう……」
掃除を一時中断し、玄関に向かう。そして鍵を開け、少し古くなった玄関を開けた。
「――はい」
「……こんにちは、しんのすけさん」
そこには、笑顔で会釈するあいちゃんがいた。
「あれ?どうしたのあいちゃん……」
「あら、私が来てはいけないんですか?」
あいちゃんは、少し意地悪な笑みを浮かべる。
「い、いや……そんなわけじゃないけど……」
戸惑っていると、彼女はクスリと笑う。
「……お邪魔しても、いいですか?」
「……あ、ああ。どうぞ」
そしてオラは、あいちゃんを家に招き入れた。
「……ん?」
その時、ふと玄関からチャイムが鳴り響いた。
「誰だろう……」
掃除を一時中断し、玄関に向かう。そして鍵を開け、少し古くなった玄関を開けた。
「――はい」
「……こんにちは、しんのすけさん」
そこには、笑顔で会釈するあいちゃんがいた。
「あれ?どうしたのあいちゃん……」
「あら、私が来てはいけないんですか?」
あいちゃんは、少し意地悪な笑みを浮かべる。
「い、いや……そんなわけじゃないけど……」
戸惑っていると、彼女はクスリと笑う。
「……お邪魔しても、いいですか?」
「……あ、ああ。どうぞ」
そしてオラは、あいちゃんを家に招き入れた。
133: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)22:30:40 ID:o1174ioJr
「――ずいぶん、片付きましたね」
あいちゃんは、そう呟きながら部屋を見て回る。
「まあね。オラの荷物、ほとんどないからさ。一人にはもったいないくらいの家だよ」
笑いながら、言ってみた。
するとあいちゃんは、顔を赤くして俯いてしまった。
「……ん?どうしたの?」
「……い、いえ……それにしても、静かですね……」
「え?あ、ああ……そうだね……」
「……」
「……」
……なんだか、不思議な空気が部屋中に満ちる。
「……私で、よければ……」
しばらく俯いていた彼女は、小さな声で話してきた。
「え?」
「……私でよければ、ご一緒に……」
「……」
……また、部屋は静まり返った。オラも、下手に喋れなくなっていた。
あいちゃんは、そう呟きながら部屋を見て回る。
「まあね。オラの荷物、ほとんどないからさ。一人にはもったいないくらいの家だよ」
笑いながら、言ってみた。
するとあいちゃんは、顔を赤くして俯いてしまった。
「……ん?どうしたの?」
「……い、いえ……それにしても、静かですね……」
「え?あ、ああ……そうだね……」
「……」
「……」
……なんだか、不思議な空気が部屋中に満ちる。
「……私で、よければ……」
しばらく俯いていた彼女は、小さな声で話してきた。
「え?」
「……私でよければ、ご一緒に……」
「……」
……また、部屋は静まり返った。オラも、下手に喋れなくなっていた。
135: 名無しさん@おーぷん 2014/08/27(水)22:33:03 ID:rLLEXw2rz
二人とも大人になったからか、なんかどきがむねむねするぞ・・・・
136: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)22:42:15 ID:o1174ioJr
二人揃って、居間に立ったまましばらく黙り込む。でも、何だかこのままじゃいけない気がした。
震える口に力を込めて、ゆっくりと口を開いてみる。
「……あ、あのさ……」
「……は、はい……」
「……今度よかったら、二人で――――」
―――プルルルル
「―――ッ!」
「―――ッ!」
突然、静かな部屋に電話の音が鳴り響く。体をビクリとさせたオラ達は、すぐに音の方を振り返る。
「な、なんだ……電話か……」
一度彼女に目をやる。彼女は、頬を桃色に染めて、困ったような笑みを浮かべていた。
何だか照れ臭かったオラは、少し重い足取りで電話に向かった。
「……はい、野原ですが……」
「――聞いてよしんちゃん!!」
受話器を耳に当てるなり、叫び声が耳を貫いた。
咄嗟に受話器を耳から離し、改めて話をする。
「……ま、まさおくん?」
「そうだよしんちゃん!――それより、聞いてよ!!」
まさおくんは、かなり慌てていたようだ。
「どうしたのさ、いったい……」
「あのね!僕、ねねちゃんに告白したんだ!!」
「……マジで?」
「マジだよ!大マジだよ!!そしたら、ねねちゃん、言ってきたんだ!“好きな人がいる”って!!!」
(……あちゃー)
思わず、手を頭に当て上を見上げた。
「とにかく、詳しい話はいつものファミレスで話すから!!すぐ来てよ!!―――ガチャリ」
まさおくんは、一方的に電話を切断した。
震える口に力を込めて、ゆっくりと口を開いてみる。
「……あ、あのさ……」
「……は、はい……」
「……今度よかったら、二人で――――」
―――プルルルル
「―――ッ!」
「―――ッ!」
突然、静かな部屋に電話の音が鳴り響く。体をビクリとさせたオラ達は、すぐに音の方を振り返る。
「な、なんだ……電話か……」
一度彼女に目をやる。彼女は、頬を桃色に染めて、困ったような笑みを浮かべていた。
何だか照れ臭かったオラは、少し重い足取りで電話に向かった。
「……はい、野原ですが……」
「――聞いてよしんちゃん!!」
受話器を耳に当てるなり、叫び声が耳を貫いた。
咄嗟に受話器を耳から離し、改めて話をする。
「……ま、まさおくん?」
「そうだよしんちゃん!――それより、聞いてよ!!」
まさおくんは、かなり慌てていたようだ。
「どうしたのさ、いったい……」
「あのね!僕、ねねちゃんに告白したんだ!!」
「……マジで?」
「マジだよ!大マジだよ!!そしたら、ねねちゃん、言ってきたんだ!“好きな人がいる”って!!!」
(……あちゃー)
思わず、手を頭に当て上を見上げた。
「とにかく、詳しい話はいつものファミレスで話すから!!すぐ来てよ!!―――ガチャリ」
まさおくんは、一方的に電話を切断した。
137: 名無しさん@おーぷん 2014/08/27(水)22:42:52 ID:xkRD8cM6K
マサオ、地獄へ向かう
142: ◆YAe/qNQv0cvW 2014/08/27(水)22:51:09 ID:o1174ioJr
(……こりゃ、面倒なことになるぞ……)
まさおくんは、ねねちゃんが好き。でもねねちゃんは、ぼーちゃんが好き。
なるほど、とても面倒な構図になっている。高確率で、嵐が吹くだろう。
「……どうか、しましたか?」
気が付けば、あいちゃんが後ろに立っていた。
「……ああ、ちょっとまさおくんが相談があるって」
「まさおくんが?」
「うん。オラ、ちょっと行かなきゃ……」
「……そう、ですか……」
彼女は、残念そうに表情を暗くした。――かと思えば、すぐに明るい表情を浮かべる。
「……私も、ご一緒します!」
「え―――?」
彼女の目は、ただオラを見つめる。それを見ていたら、何だか笑みが溢れて来た。
「……うん、一緒に行こうか!」
「はい――!」
そしてオラ達は、玄関を飛び出していった。
……こうして、オラ達の日常は積み重ねられていく。
人生では、出会いがあって、別れがある。出会いと別れは表裏一体で、それは寂しいことだ。
でもその中で、きっと手に入れる素晴らしいものがある。それは心の中に残り、生きる力に代わるんだ。
――そしてまた人は前に進み、新たなものと出会うんだろう。
「――少し急ごうか!あいちゃん!」
「はい!しんのすけさん!」
オラは彼女と、街の中を駆けて行く。とても暖かくて、安らげる手を握りながら。
オラ達の物語は、これからも続いて行くのだろう。……いや、きっと今から始まるんだと思う。
――また新しい、物語が………。
終わり
まさおくんは、ねねちゃんが好き。でもねねちゃんは、ぼーちゃんが好き。
なるほど、とても面倒な構図になっている。高確率で、嵐が吹くだろう。
「……どうか、しましたか?」
気が付けば、あいちゃんが後ろに立っていた。
「……ああ、ちょっとまさおくんが相談があるって」
「まさおくんが?」
「うん。オラ、ちょっと行かなきゃ……」
「……そう、ですか……」
彼女は、残念そうに表情を暗くした。――かと思えば、すぐに明るい表情を浮かべる。
「……私も、ご一緒します!」
「え―――?」
彼女の目は、ただオラを見つめる。それを見ていたら、何だか笑みが溢れて来た。
「……うん、一緒に行こうか!」
「はい――!」
そしてオラ達は、玄関を飛び出していった。
……こうして、オラ達の日常は積み重ねられていく。
人生では、出会いがあって、別れがある。出会いと別れは表裏一体で、それは寂しいことだ。
でもその中で、きっと手に入れる素晴らしいものがある。それは心の中に残り、生きる力に代わるんだ。
――そしてまた人は前に進み、新たなものと出会うんだろう。
「――少し急ごうか!あいちゃん!」
「はい!しんのすけさん!」
オラは彼女と、街の中を駆けて行く。とても暖かくて、安らげる手を握りながら。
オラ達の物語は、これからも続いて行くのだろう。……いや、きっと今から始まるんだと思う。
――また新しい、物語が………。
終わり
179: 名無しさん@おーぷん 2014/08/28(木)00:13:40 ID:Tu0oGLRlR
乙だった
182: 名無しなのに秀吉 2014/08/28(木)00:25:57 ID:pljV9x7j4
乙!(`・∀・´)とっっっても面白かった!!!これは小説化してもよい!!
192: 名無しさん@おーぷん 2014/08/28(木)08:57:49 ID:yqgra1tAd
久しぶりに泣かせてもらいました
乙、良かったです
乙、良かったです
引用元: ・http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1408986539/